


我々は熊野大辺路を旅した文人の長澤芦雪が逗留し最後に作品を残した場所である、地元田辺市にある真言宗の古刹、高山時にやって来たのである。山一つが寺の所領である。庭内はなにやら急ピッチで庭の改修中であった。その寺のど真ん中に、昔子供の頃写生会で来た時に描いた、大きな二重の塔がある。あれより4半世紀も経った今でもその見た目は変わらずにでんと鎮座していた。我々は、寺の居住区らしき玄関に入り、声をかけてみた。「すいません、なんとか寒山拾得図を見せて頂けないでしょうか」、寺の女将さんは「今は和歌山市の県立博物館のほうに預けておりまして、2年程前に芦雪の没後200年の時に展覧会があったばかりです。」とゆう。ならば、何かレプリカでもないですかと問うと、奥から展覧会の時の絵葉書を出してきてくれ、差し上げますとの事。「結構なものを有難う御座います」と告げ庭内を散策する事にした。その水墨画は芦雪らしく、ユーモアにあふれた作風の寒山拾得図であった。我々は、長澤芦雪が散策したであろう庭内を歩き、芦雪が腰を掛けたかもしれないお堂の片隅に腰を下ろしシガー(ラ・フロール・ドミニカーナ・モヒート)を燻らせた。芦雪が見たであろう二重の塔、小さな御堂、思いを馳せながらシガーを燻らす。普段は誰もいないこの落ち着いた雰囲気の中で、我々二人はまさに寒山拾得気分で吹かすシガーであった。(写真資料提供、和歌山県田辺市稲成町高山時)
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